「芝にいだかれて」

「芝の中に背中を潜り込ませて、
自分の望むところに根を張らせたい」
チャブカ グランダ

筆は、それを支える手の最も繊細な動きに答えてくれる。 紙は、墨が形を作り出す時の、その響きを待っている。 その動きは、時に壮快に、時に緩み、又は沈黙を続けるメロディーそのもの。 正にその場所こそが自分の居場所であると確信する、自己意識を持った真夏の原っぱに芽を出す草のように、それらの筆跡は浮上していく。

作り上げられていくその形は、筆を運ぶ作者の「気」やその精神の勢いを取り込んでいく。 そして、 言葉にならない、全体を通して直感される何かが存在する。

「芝にいだかれて」の作品集は伝統的な墨の扱いと、利用される紙の質の厳選を始め、多様な鳥の羽を使った独自の筆を手作りするところまでのユニークな創作過程を調和させている。 それは、ペルーの代表的な作曲家である CHABUCA GRANDA (チャブカ グランダ) の音楽を作者が日常的に聴き続けることによって、その音楽の詩的な宇宙空間にインスピレーションを受け、この作品集を描き始めることとなった。

この作品集は、伝統や日本の感性と、作者の出生地ペルーを統合する為の追求を証明したもので、さらにはその特異性を明らかにしている。

「世界中で、この場所だけで作り上げることが可能だった」

その理由から、この作品集に使っている作者の落款印は、移民すること、根を下ろすこと、別天地で成長することのプロセスを表す「木」と「橋」と「海」の3文字の古代文字で構成されている。

スペイン語原文 オリビア テロバ、日本語翻訳 大谷尚子 ロシーオ ササキ